駅伝ひろば箱根駅伝を支える学生たちが書いてます

No.58

第88回箱根駅伝学連日記ー第18回ー

佐藤 由理

 関東学連で常任幹事を務めています、日本女子体育大学4年の佐藤由理と申します。今年は関東学連の上部団体である日本学連で幹事長も務めています。小・中学校でバスケットボールを、中学校・高校では陸上競技と種目を移し、現在は運営側として日々業務にあたっています。

 東日本大震災では、地元・宮城県仙台市も被災しました。幸いにも私の家族・親戚・友人はみな無事でしたが、多くのひとが物資の不足に苦しみ、避難所での生活を強いられました。私が高校生のころに走っていた陸上競技場は遺体安置所となり、宮城県高校駅伝のコースも津波の影響を受けました。毎日、被災地のニュースが報道されるなか、私は悩みました。大好きなひとや町が大変な状況なのに、自分は学連の業務を続けていていいのだろうか。答えが出るのには少し時間がかかりました。震災直後、被災地に対して直接なにかすることはできなかった私が出した答えは、「今年も仙台で全日本大学女子駅伝を成功させる」でした。

 毎年10月に仙台市をコースに開催されるこの大会は、日本学連の主催大会であり、地元開催ということでとても思い入れのある大会です。幹事長として迎えた第29回大会は震災の影響があったにも関わらず、読売新聞社、仙台市、東北学連、宮城陸協などのご関係のみなさまのご協力があり、開催までこぎつけることができました。
 復興・復旧を応援する活動として、箱根駅伝で活躍された金哲彦さんと、バルセロナ・アトランタ五輪の女子マラソンで2大会連続メダルを獲得された有森裕子さんをお招きして、小学生を対象としたランニング教室を開催しました。また、選手たちは「復興祈念リボン」というものをつけて出走しました。これは選手たちの「自分たちが市街地を全力で走る際に目に見える形で気持ちを表現したい」という思いから、「がんばろう、日本。つながろう、日本。」をスローガンに制作したものです。活動の甲斐あってか、今回は約80000人の方が沿道まで応援に駆けつけてくれました。無事に選手たちがフィニッシュし、閉会式で閉会宣言を言い終えたときは、感無量でした。

 学生スポーツ、とりわけ学生駅伝には、老若男女を問わず、長きに渡り多くのファンをつける魅力があります。駅伝は非常に変わったチームスポーツだと思います。球技であるならば、コートやピッチにはチーム全員であがり、同じ時間のなかで仲間と競技を行ないます。ですが、駅伝は走り出してしまえば、1人です。特に箱根駅伝は約20kmという長い距離を、その先にいる仲間に襷を繋ぐために、1人走るわけです。私は、「仲間を信じる」という意味で、こんなに難しいチームスポーツは他にないと考えています。フィニッシュで待っている「仲間を信じて」走り抜く選手の姿にこそ、学生駅伝の魅力があるのだと思います。

 仲間やチームを想い、選手がひたむきに走る姿を第88回大会も全国のみなさんにご覧いただけるよう、最後の運営に取り組みます。1月2日・3日はぜひ沿道やお茶の間のテレビの前で、選手たちに大きな声援をよろしくお願いいたします!