駅伝ひろば箱根駅伝を支える学生たちが書いてます

No.305

第40回「閉幕」

高橋 花奈

 駅伝ひろばをご覧の皆さま、こんにちは。

 関東学生陸上競技連盟で2022年度幹事長を務めております、日本大学スポーツ科学部4年の高橋花奈と申します。

 第99回箱根駅伝終了からひと月以上過ぎましたが、その間にも箱根駅伝に関連した業務や会議などが行われており、そのすべてが終了したこのタイミングで掲載をお願いしました。

 202312日、3日に開催された第99回東京箱根間往復大学駅伝競走にて、21チームが217.1kmを完走し、無事に競技会が終了したと同時に、私の13年間の陸上競技人生も幕を下ろしました。

 はじめて駅伝ひろばに掲載していただいた「新しき発見」(96回大会.2019-11-05掲載)内でも記していますが、私は小学生で陸上競技に出会い、全国規模の競技会で輝かしい成績を収めることを目標に、選手として9年間挑戦しておりました。現実は厳しく、掲げた目標は夢物語で終わってしまい、高校3年生の時には、選手として競技を継続していくことに限界を感じ、陸上競技から離れることを考えた時期もありました。

 しかし、どんな状況でも私の気持ちから一度も消えることがなかった「陸上競技が大好き」「陸上競技に携わることが自分自身を1番表現することができる」という想いを尊重してくださった恩師の先生は、競技力が未熟な私のことを見捨てることなく、新たな立場で陸上競技に携わることができる関東学生陸上競技連盟の学連幹事として活動する道を開いてくださいました。先生から初めて学連活動のお話をいただいた時には、正直、選手として陸上競技に挑むことができない悔しさもあり、自分の気持ちを整理することに時間もかかりました。それでも、悔しさ以上に、大好きな陸上競技で今からでも自分自身が輝ける場所があるのであれば挑戦したいという気持ちが勝り、恩師の先生を信じて、関東学連の学連幹事になることを決意しました。新たな道に挑戦するからには悔いなくやり切りたい!やるからには幹事長に挑戦し、私らしい陸上競技人生を彩り、やり遂げたい!という目標を掲げ、選手時代のように「掲げた目標を夢物語で終わらせたくない」という一心で駆け抜けた4年間であったと振り返り、感じています。

 大学1年生の第96回箱根駅伝までは、全競技会が有観客で通常開催されており、学生スポーツらしい熱気あふれる競技会でした。しかし、新型コロナウイルス感染症流行を機に、2019年度関東学連春季オープン競技会から中止や開催方法の変更、無観客開催を余儀なくされてしまいました。大好きな陸上競技の取り組みが厳しい社会情勢により強制的に失われていき、私の中で人生の主軸となっていたものが一瞬にして無くなり、学連幹事としての活動意義だけでなく、生きる意味さえ見失いそうになる日々を過ごした時期もありました。活動意義について悩んでいたのは私だけではなく、今までの社会とはかけ離れ過ぎてしまった日常に戸惑い不安を感じた同期も多く、私たちの学年は12名から4名まで同期が減ってしまい、大学2年生の時が、いちばん悩み・苦しみ・辛く・別れの多い1年間でした。

 ですが、人生の主軸だったものが一度崩れてしまったからこそ、私の中で如何に陸上競技が大きな存在で人生を彩るものであったかを再認識することができ、関東学連の活動により一層想いを込めて取り組むことができるようになった良い転機でもあったかなと、今は感じています。

 大学23年生と開催方法の変更・無観客開催と猛威を振るう新型コロナウイルス感染症の影響を受けながら、社会情勢に見合った競技会運営を行っておりましたが、やはり1年生の時に肌で感じた学生スポーツらしい熱気あふれる競技会をもう一度経験したいという気持ちが、最高学年になりより強くなりました。そして、大学4年生として迎える陸上競技人生最後の1年は、本連盟年間10競技会を有観客で開催することを学連幹事の活動目標に掲げて2022年度シーズンが幕開けしました。そんな願いが届いたのか、幸いにも感染状況が落ち着き始め、また関係各所の皆様に快くご協力いただくことができたおかげで、5月には9年ぶりに国立競技場を主会場とした第101回関東学生陸上競技対校選手権大会を3年ぶりに有観客開催できました。続いて、7月には第18回トワイライト・ゲームスを開催、9月には公道を利用した駅伝方式の第29回関東大学女子駅伝対校選手権大会を開催、10月には第99回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会を陸上自衛隊立川駐屯地~立川市街地~国営昭和記念公園の通常コースでの開催等、完全再現までとはいきませんでしたが、3年ぶりに新型コロナウイルス感染症流行前の競技会方式で開催することができました。私たちの学年以外、通常開催を経験したことがない後輩たちのため、記憶と記録を頼りに競技会雰囲気や業務を伝えていくことに難しさを感じ、幹事長として悩み苦しみながら業務に邁進しましたが、陸上競技人生の集大成として最高に充実した素晴らしい1年となりました。

 陸上競技を通して、大好きなことに夢中になり取り組むことができる環境は決して当たり前ではなく、一瞬にして奪われてしまうことがあることを知ったからこそ、自分が大切にしたい物事に挑戦できる機会を得ることができたのならば、その瞬間を逃すことなく、掲げた夢に向かって人生を懸けて無我夢中に取り組み、自分自身の手で誰にも真似できない彩り豊かな人生に染めていけるような生き方をしていきたいと学ぶことができました。

 さて、箱根駅伝は来年度100回大会を迎えることになります。歴代の学連幹事や大会運営に従事してくださる関係者の皆さま、選手の皆さまの箱根駅伝に懸ける想いが途絶えることなく繋いできた「たすき」があることに加え、応援してくださる観客の皆さまに愛され、育てていただけたからこそ100回目を迎えることができるのだと感じております。私自身も、箱根駅伝を愛するすべての皆さまの想いを胸に、100回大会以降につながる99回大会の開催に向けて総務として業務に全うしました。箱根駅伝は100回大会で終了するものではなく、永久に開催していくための通過点であると私は考えております。お正月の風物詩として皆さま方の記憶と記録に残る箱根駅伝を開催していくために、学連幹事は今まで以上に業務に邁進して参りますので、引き続きご協力いただけますと幸いです。

 これからも関東学生陸上競技連盟をどうぞよろしくお願いいたします。